「契約違反による解除」とは?~不動産売買契約書の解説

契約違反による解除とは?解除の要件・違約金・原状回復をわかりやすく解説


この条項は、売主または買主が契約上の義務を果たさなかった場合に、契約を解除できる条件と、解除後の違約金や原状回復について定めたものです。


不動産売買では、一方が約束を守らなかったからといって、すぐに契約を解除できるわけではありません。法律上の要件を満たした場合にのみ、解除と違約金の請求が認められます。


  1. 契約違反があるだけでは解除できない


  2. 「履行の提供」と「催告」が必要になる


  3. 違約金は実際の損害額とは関係なく契約で定めた金額となる

契約違反による解除の3つの要件


契約違反を理由として解除するためには、次の3つの要件を満たす必要があります。


  1. 契約違反(債務不履行)があること
  2. その契約違反が法律上解除できる状態であること
  3. 相当期間を定めて履行を催告したこと




① 契約違反(債務不履行)があること


契約書では「契約に定める債務を履行しないとき」と規定されています。


ただし、すべての契約違反が解除理由になるわけではありません。


特に契約の根幹となる義務の不履行が解除事由になります。


例えば次のようなケースです。


  • 買主が残代金を支払わない
  • 売主が物件を引き渡さない
  • 売主が所有権移転登記に応じない
  • 売主が抵当権等の抹消をしない
  • 引渡し前の滅失・毀損について修復義務を果たさない

一方で、軽微な義務違反や契約の目的に大きな影響を与えない違反については、解除まで認められない場合があります。


解除できるかどうかは「契約違反の重大性」が重要になります。すべての違反が解除理由になるわけではありません。




② 契約違反が法律上解除できる状態であること(同時履行の関係)


契約違反があっても、それだけで解除できるとは限りません。


売主・買主双方が同時に履行すべき義務については、「同時履行の抗弁権」があるためです。


例えば、


  • 売主の引渡し
  • 所有権移転登記
  • 買主の残代金支払い

これらは同時に行われることが予定されています。


そのため、売主が引渡しの準備をしていないのに、買主だけに支払いを求めても、買主は契約違反にはなりません。


契約書第1項の


「自己の債務の履行を提供し」


という文言は、この同時履行の原則を意味しています。


決済日に自分も契約を履行できる状態であることが、相手方へ解除を主張する前提になります。




決済日前の「キャンセルしたい」は契約違反ではない


よくある誤解として、買主が決済日前に「キャンセルしたい」と言っただけで契約違反になると思われることがあります。


しかし、この段階ではまだ契約違反とはいえません。


決済日までは残代金を支払う期限が到来しておらず、法律上は「期限の利益」が認められているためです。


売主についても同様で、決済日前は引渡し義務の履行期限が到来していないため、まだ契約違反にはなりません。


つまり、期限が到来して初めて履行義務が発生し、その時点で履行しなければ契約違反となります。





③ 催告をしたこと


解除するためには、契約違反をした相手に対し、相当期間を定めて履行を求める必要があります。


これを「催告」といいます。


通常は、証拠を残すために配達証明付き内容証明郵便で通知します。


例えば次のような内容になります。


本書面到達後7日以内に売買代金をお支払いください。期限までに履行がない場合は、本契約を解除し、あわせて違約金を請求します。

催告期間が経過しても履行されなければ、解除権を行使できます。





違約金とは


契約違反によって解除された場合は、契約書で定めた違約金を請求できます。


この違約金は、実際の損害額とは関係ありません。


契約書にも


「現に生じた損害額の多寡を問わず増減請求できない」


と定められています。


つまり、実際の損害が違約金より大きくても小さくても、原則として契約で定めた金額で精算されます。


  1. 違約金は「損害賠償額の予定」でもある


  2. 実損害を証明する必要はない


  3. 追加請求や減額請求も原則できない




違約金はいくらに設定するのが一般的?


一般的な不動産売買契約では、売買代金の10〜20%程度を目安に定めるケースが多く見られます。


違約金が低すぎると契約解除の抑止力が弱くなります。


反対に高額すぎると、違反した当事者が支払えず、結果として紛争が長期化する可能性もあります。


なお、造成工事や建物解体など多額の先行費用が発生する取引では、想定損害を踏まえて違約金額を設定することもあります。ただし、宅地建物取引業者が売主となる場合には宅地建物取引業法による制限(損害賠償額の予定等は代金の20%を超えられない場合)があるため注意が必要です。


個人間売買と宅建業者売主では違約金の設定ルールが異なる場合があります。契約形態に応じて確認しましょう。




契約解除後の原状回復義務


契約が解除されると、契約は最初からなかった状態に戻す必要があります。


これを「原状回復義務」といいます。


具体的には次のような手続きが必要です。


  • 所有権移転登記の抹消
  • 物件の返還・明渡し
  • 受領済みの手付金や中間金などの返還

また、契約書第5項では、違約金の支払いと原状回復は同時に行うことが予定されています。


解除後は「お金を返す」「登記を戻す」「物件を返す」を同時に行い、契約前の状態へ戻すことが原則です。




まとめ


契約違反による解除は、単に約束が守られなかっただけでは認められません。


契約違反の内容、同時履行の関係、催告など法律上の要件を満たして初めて解除が可能になります。


また、解除後は契約書で定めた違約金により精算し、原状回復義務を履行することで取引を終了させます。


  1. 解除には「契約違反・履行の提供・催告」の3要件が必要


  2. 違約金は実損害とは別に契約で定めた金額で精算する


  3. 解除後は原状回復義務を履行して契約前の状態へ戻す

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