不動産売買契約書の解説 「手付」(手付金)とは

手付(手付金)とは?売買代金とは違う重要な意味をわかりやすく解説


不動産売買契約では、契約時に「手付金」を支払うのが一般的です。


契約書には次のような条項が記載されています。


第○条(手付)


1.買主は、売主に手付として、この契約締結と同時に標記の金額(B2)を支払う。


2.手付金は、残代金支払いのときに、売買代金の一部に無利息で充当する。


一見すると、手付金は最初から売買代金の一部のように思われますが、法律上は少し違います。


この記事では、手付金の意味や役割について、できるだけわかりやすく解説します。





手付金は契約時点では売買代金ではない


不動産売買では、通常、次のような流れで代金が支払われます。


  1. 契約時:手付金
  2. 途中:中間金(ある場合)
  3. 引渡し時:残代金

このうち、中間金と残代金は、法律上も売買代金の支払いです。


一方で、手付金は「手付契約」に基づいて支払われるお金であり、契約締結時点では売買代金そのものではありません。





ポイントとして

手付金は、残代金決済の日に初めて売買代金の一部へ充当されます。


つまり、契約時点では「手付」であり、決済が完了して初めて売買代金の一部になるということです。


この考え方は、後ほど説明する「手付解除」の制度を理解するためにも重要になります。





手付金には4つの意味があります


手付金には、契約内容によって次のような性質があります。


  1. 証約手付
  2. 解約手付
  3. 違約手付
  4. 損害賠償の予定


契約によって複数の意味を持つことがありますが、最低でも証約手付としての性質は備えています。


また、民法では、特別の定めがなければ「解約手付」が原則とされています。





① 証約手付


手付金には、契約内容によって次のような性質があります。


  1. 証約手付
  2. 解約手付
  3. 違約手付
  4. 損害賠償の予定


契約によって複数の意味を持つことがありますが、最低でも証約手付としての性質は備えています。


また、民法では、特別の定めがなければ「解約手付」が原則とされています。





② 解約手付


証約手付とは、「契約が成立したことを証明するため」に交付される手付です。


契約成立の証拠という意味を持っています。





③ 違約手付


解約手付とは、一定の条件のもとで契約を解除できる権利を認めるための手付です。


一般的には、相手方が契約の履行に着手するまで、または契約で定めた日までであれば、次の方法で契約を解除できます。


  • 買主:支払った手付金を放棄する
  • 売主:受け取った手付金の倍額を返還する(手付倍返し)

ポイント

解約手付による解除では、相手に債務不履行がなくても契約を解除できます。


通常、契約は相手方に契約違反(債務不履行)がなければ解除できません。


しかし、解約手付では、そのような理由がなくても契約を終了させることができます。


また、解約手付による解除は債務不履行による解除ではないため、通常は損害賠償の問題も発生しません。





④ 損害賠償の予定


違約手付とは、当事者の一方に債務不履行があった場合に、違約罰として機能する手付です。


この場合は、損害賠償とは別に、手付金を没収したり、倍額を支払ったりする効果が生じます。





手付金はいくらに設定すればよい?


損害賠償の予定としての手付とは、債務不履行があった場合の損害賠償額を、あらかじめ手付金の額に固定するものです。


違約手付との違いは、損害賠償額が手付金の額に制限される点です。


例えば

実際の損害が手付金より大きくても、原則として手付金を超える損害賠償は請求できません。





手付金を低額にし過ぎるリスク


一般消費者同士の不動産売買では、手付金額に法律上の上限・下限はありません。


ただし、売主が宅地建物取引業者である場合には、宅地建物取引業法により、手付金は売買代金の20%以内という制限があります。





申込証拠金と手付金は別のものです


実際の裁判例では、売買代金900円に対して手付金6円でも、解約手付として有効と判断された例があります(大審院 大正10年6月21日判決)。


しかし、実務上は手付金をあまり低額に設定することはおすすめできません。


例えば、1億円の土地を手付金1万円で契約した場合には、


  • 売主は2万円を返せば契約を解除できる
  • より高値で買ってくれる第三者へ売却しやすくなる
  • 買主も手付を放棄するだけで契約をやめやすくなる

このように、手付金が少額すぎると、契約の拘束力が弱くなってしまいます。


実務上の注意

手付金を低額に設定すること自体は可能ですが、契約の安定性という観点からは慎重に検討することをおすすめします。





まとめ


購入申込みの際に、申込証拠金を預かる不動産会社があります。


この申込証拠金は、購入意思を確認するための預り金であり、その時点では売買契約はまだ成立していません。


その後、売買契約が成立すれば、申込証拠金は手付金の一部へ充当されることが一般的です。


一方、契約が成立しなかった場合には返還されます。


ポイント

申込証拠金は単なる預り金であり、手付金とは法律上の意味が異なります。





まとめ


  • 手付金は契約時点では売買代金ではない
  • 決済時に初めて売買代金へ充当される
  • 手付には「証約」「解約」「違約」「損害賠償予定」の4つの意味がある
  • 民法では解約手付が原則となる
  • 手付金を低額にすると契約の拘束力が弱くなる場合がある
  • 申込証拠金と手付金は法律上まったく異なるもの

最新情報をチェックしよう!