登記に公信力はないことは不動産のお勉強をされた方であればご存知だと思います。

今回はその登記の公信力についてのトラブル事例をご紹介します。

これは実際にあった出来事なので、あなたの身に降りかかる可能性もありますので、理解を深めてください。

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実際にあった不動産業者の調査不足によるトラブル事例

千葉地裁 判決平成12年11月30日(判例時報1749号96頁)より

紛争の内容
  1. AはBが所有していた土地について、Bの登記申請委任状・印鑑証明書を偽造し、平成8年3月にBからAへ所有権移転手続き(贈与により)を行い、同年4月にAから宅建業者Cへ売却し、所有権移転手続きを行った。
  2. 宅建業者Cは、この土地を3筆に分筆し、その売却を宅建業者Dに依頼した。
  3. 買主E1は平成8年4月に1筆の土地(イ)を、買主E2は平成8年6月に1筆の土地(ロ)をそれぞれ、媒介業者Dの媒介で売主Cから買い受け、所有権移転手続きを完了した。
  4. ところがBは平成8年1月に死亡しており、その相続人はこの土地についての贈与を起因とする所有権移転登記はBに無断でなされたものであるとして、Aや買主E1・E2に対して所有権移転登記の抹消手続きを求める訴訟を同年7月に提訴し、平成9年2月勝訴判決によりEらへの所有権移転手続きは抹消された。
    そこでEらは平成9年4月、登記官が所有権移転登記申請に添付された偽造の印鑑証明書を看過して登記を実行した結果、売買代金相当額の損害を被ったとして、媒介業者Dおよびその代表者に対して損害賠償請求をし、国に対しても国家賠償を請求した。

当事者の言い分

買主Eらの言い分
媒介業者DはBの遺族に確認するなどして、本件土地の所有権移転の確実性を調査確認し、その調査結果いかんによっては買主の募集の中止、売買契約の危険性をEらに助言すべき義務があったにも関わらず、これを怠った。

媒介業者Dの言い分
登記簿上の所有者となっている売主からの売買を媒介する場合は、全登記名義人と売主との所有権移転が真実に行われたかどうかについてまでは調査し確認する義務はない。

この事例の問題点と結論

媒介業者は不動産の売買等を媒介するにあたり、売主と称するものが売買権限を有する真の所有者かどうかについて調査する義務があるものの、全登記名義人にまでさかのぼって調査する義務があるかどうか?

という点についてが問題とされました。


判決は、買主Eらの主張を認め、媒介業者Dに対し売買代金と弁護士費用相当額を損害賠償額として支払うことを命じた。

そして国にも賠償責任があるとした。


この事例からわかる事

  1. 権利関係の調査は基本的な義務であること
  2. 媒介業者は媒介にあたって取引物件の所有者が誰であるか、賃借人・抵当権等の権利が設定されていないかを調査する義務がある。
    そのため、疑わしき点がある場合は、調査を行うことが当然である。
  3. 不動産登記に公信力はない
  4. 我が国の不動産登記には不動産の権利変動を公示するが、一応推定力はあるものの、登記簿上の権利者が必ずしも実態上の権利を有していない場合があり、公信力は認められていない。
    そのため媒介業者は、売主と称する者が本当に所有者かどうか、何らかの疑念を抱いた場合はさらなる調査をするか、取引の危険性について説明をするなどの配慮すべき業務上の注意義務がある。

といいったところでしょうか。

今回の事例で行くと、BからAへの所有権移転について時期についての疑義があるため、不動産業者はその疑義を調査すべきであるという結論です。

本来物件の調査をするうえで、登記名義人と売主なるものが同一であれば疑念を抱くことの方が珍しいのですが、現在でいうと全部事項証明書を見た時に、”BからAへの所有権移転が贈与であることと、死亡時期が贈与登記よりも以前であること”について疑問を抱く能力が必要になります。

自分を振り返った時にどうでしょうか?

かなり難しいことだと感じるのは私だけではないと思います。

しかしそこまで問われるのが不動産業者の宿命なので、日々研鑽を積まなければならないという事でしょう。